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歯科にかかる理由で多いものに、親知らずのトラブルがあります。「私も痛むの?」「必ず抜くの?」……そんな疑問をもつ人に、親知らずの治療の知識を紹介します。

「親知らず」とは、第三大臼歯(智歯)の俗称で、 本の歯のうちもっとも遅く生える上下左右4本の奥歯のことです(親知らずがもともとない人もいる)。いちばん遅く生えるので、萌出(はえ出す)時にはすでに十分なスペースがなく、正常に萌出できない、という状態に陥ります。こうなると完全な形や正しい方向に萌出できず、歯肉を噛んで痛んだり、正しいブラッシングができないため、むし歯や周囲炎をおこしやすくなります。また、歯肉の中にある段階から横倒しになり、ほかの歯を押して歯並びに悪影響を及ぼすこともあります。

親知らずがトラブルをおこしたとき、歯を残すための治療をするか、抜歯するかは、今後、その親知らずがその人にとって必要か不必要かで判断されます。噛み合うはずの反対側の歯がない、歯磨きが困難で再トラブルの可能性が高い、むし歯が歯髄まで及んでいて治療がむずかしい(親知らずは歯髄の構造が複雑な場合が多いため)、などのデメリットが多い場合は抜歯になります。

親知らずが横向きに萌出している場合は、「分割抜歯」という方法がとられます。これは歯肉を切り、骨を削って歯冠を一部露出させたのち、歯冠を切って(分割して)、歯冠部、根の部分……と順番に取り出す方法です(下図参照)。

トラブルをおこしても、正常に噛み合っていて、きちんと治療もメンテナンスもできる場合や、将来、ブリッジの支台歯として必要になりそうなときなどは、抜歯せずに、親知らずを残すための治療が行われます(下囲み参照)。

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患者自身に、日常行っている方法で歯みがきをしてもらったあと、歯垢染色液を塗布する。歯の赤く染まったところが歯垢がついている場所。
1:歯肉を切開し、ピンクの部分の骨を削合(削る)。
 
2:親知らずを点線で分割、頭側を除去する。
 
3:歯根を除去(除去しきれないときは、さらに骨を削合、歯根を分割することも)。
親知らずは倒れているが、完全に埋まっているので、細菌が入り込むことはない。隣の歯に悪影響がなければ、もちろん治療の必要はない。
頭だけ出ている親知らず(矢印)。歯と歯肉の間から細菌が入り、歯周病で歯槽骨まで溶けている(歯根部分が薄く写っている)。歯磨きしづらいため、接している7番の歯がむし歯になった(○印の部分)。

親知らずを残すことが考えられるとき(親知らずが正常に生えている場合のみ)

1:ブリッジや入れ歯の支えになりそうなとき
7番の歯がむし歯などで、将来、喪失しそうなときは、6番と8番(親知らず)を支台歯にしてブリッジをつくったり、8番を部分入れ歯の支えにする可能性があるので、親知らずにトラブルがあっても抜歯せず、残す治療を行う場合がある。

2:他の場所への移植が考えられる場合
7番を喪失した場合、または喪失しそうな場合は、そこに親知らずの「移植」を試みる歯科医もおり(状態により、成功率は一定ではない)、そのために、親知らずを残す治療を行うことも。

妊娠の可能性が考えられる女性の場合、妊娠中の歯のトラブルや抜歯治療を避けるため、事前に親知らずの抜歯がすすめられるケースもある。
 
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